水槽で魚などを飼育する際には、エアレーション装置(ぶくぶく)を使用するイメージがあると思います。
とりあえず使っているという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、エアレーション装置の役割や効果、使用する際の注意点について詳細に解説していきます。
エアレーション装置とは
エアレーション装置は、エアーポンプなどの空気を水槽内に送り込む装置です。
エアーチューブ、エアーストーンなどを接続して使用するものが一般的です。
底面式フィルターや投げ込み式フィルター、スポンジフィルターなど、フィルターや濾過装置に接続して使用される場合もあります。
底面式フィルターや投げ込み式フィルター、スポンジフィルターについては以下の記事でまとめていますのでそちらもご覧ください。
エアレーション装置の役割
エアレーション装置の役割は以下の通りです。
エアレーション装置の役割① 酸素供給
水中への酸素供給は多くが空気と触れ合う水面で行われ、飽和溶存酸素濃度で平衡状態になっています。
飽和溶存酸素濃度は酸素の溶解と放出の量が釣り合ったときの酸素濃度であり、気圧や温度などによって変化します。
エアレーション装置がない場合でも水面と空気は触れ合っていますので、ある程度の酸素供給は行われますが、特にフィルターや濾過装置がない場合は水の循環が少ないため水面付近の酸素濃度のみ高くなり、底の方の酸素濃度は低くなってしまいます。
また、水面付近では酸素濃度が飽和溶存酸素濃度に達しているため、それ以上の酸素溶解は起こりにくく、効率的な酸素供給を行うことができません。
エアレーション装置を使用すると、泡自体によっても多少の酸素供給が行われますが、それ以上に泡が水面を揺らすことによる効果が非常に大きいです。
水面が波立つと空気と触れる面積が増えるので酸素を取り込みやすくなります。
また、泡による水流で水槽内の水が循環することによって常に水槽全体に酸素が効率的に供給されるようになります。
特に生体の飼育密度が高い場合は酸素の消費量も多く、酸欠が起こりやすくなるため、そのような場合はエアレーションによりしっかりと酸素供給が行われるようにする必要があります。
エアレーション装置の役割② 水の循環
エアレーション装置を使用すると泡が上昇する勢いによって水が動き、水槽内の水が良く循環します。
これにより水が動いていない場所である止水域を減らすことができ、病気発生の原因にもなる淀みが解消されます。
別に濾過装置を使用している場合においても、水槽の大きさに対して流量が少なく水の循環量が少ない場合には、追加でエアレーションを行うことによって濾過もより効率的に行われるようになります。
底面式フィルターや投げ込み式フィルター、スポンジフィルターなどの場合はそれ自身がフィルターや濾過装置として働き、酸素供給や水の循環能力向上に寄与すると共に濾過も行われるため、メインフィルターとしてだけでなく他の濾過装置のサブフィルターとしても非常におすすめです。
エアレーション装置の役割③ 濾過バクテリアの活性化
エアレーションを行うことにより水中の酸素濃度が上昇すると、濾過バクテリアが活性化します。
通常、濾過バクテリアは水中の有機物を分解し、アンモニア→亜硝酸→硝酸と毒性の高いものから低いものへと変化させる生物濾過を行い、魚やエビなどが生きていける環境を構築します。
濾過バクテリアによる生物濾過や水の浄化については以下の記事でまとめていますのでそちらもご覧ください。
この生物濾過の過程では、濾過バクテリアは酸素を使用します。
十分な量の酸素がない場合には濾過バクテリアの働きが鈍くなり数も減ってしまうため、特に過密飼育の場合にはしっかりとエアレーションをしてあげることでバクテリアの活性を高めてあげる必要があります。
エアレーション装置の役割④ 油膜の発生防止
エアレーションには水槽に張った油膜を解消する効果もあります。
油膜は、分解しきれなかったタンパク質や脂質などの有機物が水面に溜まって生じるものであり、水面を覆ってしまうので観賞性の低下や水面での酸素供給の阻害など、様々な悪影響がります。
有機物が分解しきれない原因は過密飼育やフィルター・濾過装置のスペックの不足による濾過バクテリアの不足や、餌のやりすぎ、死骸の放置、水草のトリミング後などで葉の切れ端がたくさん残っていたりするなど、一時的な有機物の増加などが挙げられます。
エアレーションをすることによって水面が揺らされたり、水が良く循環するようになるので、水面にタンパク質や脂質が溜まりにくくなります。
そのためエアレーションをすると油膜が出にくくなるので、油膜の防止としては非常に有用です。
ただし、濾過不足や有機物過剰の状態で慢性的に油膜が発生している場合は、エアレーションで油膜が消えたとしても水質に関しては根本的な解決にはなっていないことに注意が必要です。
エアレーションを行い酸素濃度が上がることによるバクテリアの活性化や、水が循環することによる濾過の高効率化により多少状況は良くなりますが、明らかな濾過不足や有機物過剰が原因の場合は濾過装置の増設や飼育密度を減らしたり餌の量を調節するなどして、根本的な解決を目指すことをおすすめします。
エアレーション装置の役割⑤ 水温の均一化
水槽内の水の温度は、水の循環がない場合は上の方が温かく、下の方が冷たくなる傾向があります。
特にヒーターを使用している場合は温められた水が上に向かうので、水面付近と底の温度差が大きくなる場合があります。
このような状態ではヒーターのサーモスタットの場所(水中の高さ)によって水温が大きく変わってしまいますし、ヒーターが効率的に働きません。
ヒーターを使用する場合はエアレーションを行って水を循環させると水温が場所によって極端に変化するのを防いでくれます。
エアレーション装置の役割⑥ 高温対策にも
一般的に水温が高くなると酸素は水中に溶け込みにくくなります。
そのため、夏場の高温時は水温が上昇して水中の酸素が足りなくなり、生体が酸欠を起こす場合があります。
本来は水温が30度以上になる場合にはエアコンや水槽用クーラー、冷却ファンなどで水温を下げる必要がありますが、金魚やメダカなどのある程度高温に強い種類であれば、しっかりとエアレーションを行い酸欠を防止することで30~33度程度でも問題ない場合もあります。
また、エアレーションにより水の蒸発を促し、気化熱により若干の水温を下げる効果があります。
ただし、エアレーションによる高水温対策はあくまで生体への致命的なダメージを軽減するという意味合いですので、水温が30度を超えるような状態であればエアコンや水槽用クーラー、冷却ファンを使用してしっかりと水温を調整すべきです。
特に高温に弱い魚などには注意が必要です。
エアレーション装置の役割⑦ 泡でインテリア性アップ
水中の泡はよくよく見てみると非常にきれいです。
エアカーテンを使用して泡の壁を作ると水槽全体がさわやかな印象になります。
水槽の中を泳ぐ魚と泡も含めてデザインして水槽を作っていくのも非常に面白いです。
各メーカーより様々なエアカーテンが販売されています。
エアレーション装置を使用する際の注意点
エアレーションには様々な効果がありますが、使用する際にはいくつか注意点があります。
エアレーションの注意点① 逆流防止対策をする必要がある。
停電などでエアーポンプが停止した際に水が逆流しポンプを故障させたり、水が水槽外に出てしまうことがあります。
これは、勢いよくチューブに空気が流れていた状態で急にポンプが止まることでエアーチューブへの空気の輸送は止まりますが、ある程度の量の空気はチューブから出て行ってしまうことによるものです。
そうするとチューブ内の一部が真空になるため、今度は水がチューブを逆流していきます。
このとき、エアーポンプが水面より低い位置にあると、サイフォンの原理によって水の逆流が止まらなくなり、エアーポンプが故障したり床に大量の水がこぼれたりしてしまう可能性があります。
このような事故を防ぐためには、エアーポンプを水面よりも高い位置にセットするか、逆流防止弁を使用するのが良いです。
エアレーションやCO2添加における水の逆流を防ぐアイテムです。
供給を止めた際、ポンプやレギュレーターなどの機器を破損させる事故を未然に防ぎます。
エアレーションの注意点② 音が気になることも
エアレーションに使われるエアーポンプは製品によっては音がうるさいものもあるため、寝室やリビングなどの静かにしておきたい場所に設置する場合には注意が必要です。
音が気になる場合は、以下の製品のような音が小さいことで有名な製品を選ぶと良いでしょう。
この製品はエアーポンプの中でも定番の製品であり、音も小さく、万が一の故障の際にも安価で交換ユニットが販売されているので使い勝手がよく、非常におすすめできる製品です。
静かといわれるエアポンプの代表ともいえる「水心」シリーズ。
ダイヤル式でエアの量が調節でき、特殊設計の消音室 でエアを滑らかにして不快な音をなくし、従来型の1/3(当社比)まで静音を実現しました。
水作 水心 SSPP-3用交換ユニット
水作のエアーポンプ水心 SSPP-3/3sの交換用ユニットです。
また、エアーポンプの音だけでなく、泡がはじける音が気になる場合もあります。
エアーストーンの性能による泡の細かさや、エアリフト方式のフィルターの場合は構造によって音の発生が大きく変わります。
大きい泡の場合はブクブクとした音が、細かい泡であればシュワシュワとした音が発生する場合がありますが、設置の仕方を工夫すると音がほとんどしない場合もありますので、気になるようであればいろいろと調整してみると良いと思います。
エアレーションの注意点③ 飛沫が発生する
エアレーションにより発生した泡が水面ではじけることにより水がはねて飛沫が発生します。
飛沫の一つ一つは非常に小さいですが、エアーポンプが稼働している間は24時間毎日発生し続けるものになりますので、はじけ飛ぶ水の量は結構な量になります。
水槽周辺に耐水性のない照明などの機器やコンセント類などが存在する場合はフタをして飛沫が水槽外に出ないようにしましょう。
また、飛沫が当たる部分のフタや、アクリル水槽のフランジ部分は照明も当りやすい場所なので苔が生えやすいです。
水槽の後方であればフタや水槽の水面より上の部分なので観賞面では大きな問題ではないと思いますが、気になるようであれば定期的に掃除をする必要が出てきます。
また、特に海水の場合ははじけ飛んだ海水によって白い塩分の塊である塩だれが発生することがあるので注意が必要です。
エアレーションの注意点④ エアーの吐出量に注意
特に小型水槽の場合、エアーの量が多すぎると水槽内に強い水流が発生することがあります。
メダカやベタなど、強い水流が嫌いな魚の場合はエアーの量を減らして水流を穏やかにする必要があります。
このような場合は分岐を用いて水槽に送りこむエアーの量を調整する方法もありますが、下のような吐出量調整機能付きのエアーポンプを使用すると非常に楽ですし、いろいろな水槽で使用できるので使いやすいです。
静かといわれるエアポンプの代表ともいえる「水心」シリーズ。
ダイヤル式でエアの量が調節でき、特殊設計の消音室 でエアを滑らかにして不快な音をなくし、従来型の1/3(当社比)まで静音を実現しました。
エアレーションの注意点④ 水草水槽には不向き
水草水槽では水草の成長促進のために二酸化炭素を添加している場合があります。
この状態でエアレーションをしてしまうとせっかく水中に溶けた二酸化炭素が空気中に出て行ってしまい、添加効率が非常に悪くなってしまいます。
このような水槽では外部式フィルターなどの二酸化炭素が逃げにくいフィルターを使用して、エアレーションはしないようにするのが一般的です。
エアレーション装置は必要?
上記の通り、エアレーションには様々なメリットや注意点がありますので、それを理解した上で必要であれば設置するようにしましょう。
例えば飼育密度が高い水槽や、酸素を多く必要とする大型魚の飼育の場合ではエアレーションを行って酸素供給や濾過の効率化をするのは非常に重要です。
一方、小型水槽で小魚の少数飼育をしているような水槽や上部式フィルターを使用している水槽などでは、水の循環や濾過ができていれば酸素不足になることはありませんし、二酸化炭素を添加している水草水槽では二酸化炭素が抜けてしまうのでエアレーションはしないほうが良いです。
水草が光合成をしない夜間の酸欠が心配というのであれば、夜間のみエアレーションをするなどの使い方も良いと思います。
また、ヒーターを設置している水槽でフィルターや濾過装置などの水の循環をさせる装置がない場合などは、エアレーションを使用して温度の均一化を促すのも良いでしょう。
エアレーション装置は自分の水槽の環境に合わせて設置するようにしましょう。
まとめ
エアレーション装置は、エアーポンプを使用して空気を水槽内に送り込む装置であり、エアーポンプとエアーチューブ、エアーストーンなどを接続して使用するものが一般的です。
底面式フィルターや投げ込み式フィルター、スポンジフィルターなど、フィルターや濾過装置に接続して使用される場合もあります。
エアレーション装置の役割や効果は、酸素供給や水の循環、濾過バクテリアの活性化や油膜の発生防止、水温の均一化や高水温対策など様々なものがあります。
また、エアカーテンなどを使用して泡でさわやかな雰囲気を演出してインテリア性の向上に使用するのも良いと思います。
エアレーション装置を使用する際の注意点は、逆流防止対策をしていないとポンプの故障や水漏れ事故の発生の原因になることや、音や飛沫の問題、エアーが強すぎることによる水流の問題などがあります。
アクアリウムにおいてエアレーション装置を使用することのメリットは非常に多いですが、このような注意点も理解した上で、自分の水槽の環境に合わせて設置するようにしましょう。
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