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水質管理

アクアリウムにおける水槽内の水質浄化サイクル(生物濾過サイクル)

アクアリウムにおける水槽内の水質浄化サイクル(生物濾過サイクル)

水槽内で魚やエビなどの生体を飼育する際には、生体が健康に生きていけるための水質を長期に渡って維持し続ける必要があります。

これができていないと水質悪化により病気が発生しやすくなったり、最悪の場合生体が全滅してしまうこともあります。

ここではアクアリウムにおける水槽内の水質浄化サイクル(生物濾過のサイクル)について詳しく解説していきます。




水槽内での水の浄化(生物濾過)サイクル

安定した水槽では、水の浄化サイクル(生物濾過のサイクル)が出来上がっており、水質の維持がしやすい環境になります。

ここではどのように浄化サイクルが回っていくのか、詳細に解説します。

① 有機物の発生

水槽内の生体は生きている以上は餌を食べてフンをし、体内で代謝が行われて老廃物も水中に排出されます。

この時に発生する餌の残りやフン、飼育生体の老廃物などに含まれるたんぱく質やアミノ酸などの有機物が水質悪化の原因でもあり、浄化サイクルの原点です。

他にもバクテリアの死骸や枯れて溶けた水草などにも有機物は含まれており、このようなものも同様に浄化サイクルを回ることになります。

② 有機物を分解してアンモニアに

発生した有機物は多くの種類の有機栄養細菌(従属栄養細菌)によってアンモニア(NH3)に分解されます。

有機栄養細菌(従属栄養細菌)は、生きていくために必要な炭素を生成するために有機化合物を利用し、その際にアンモニア(NH3)を排出します。

また、この有機栄養細菌(従属栄養細菌)は好気性細菌であり、代謝を行う際に酸素を消費します。

このようにして発生するアンモニア(NH3)は窒素原子(N)に水素原子(H)が3つ結合した分子ですが、下の図に示す通り構造内に非共有電子対が存在するため非常に不安定であり、この部分と水中の水素イオン(H+)が結合してアンモニウムイオン(NH+)に変化しやすい性質があります。

アンモニア(NH3)はアンモニウムイオン(NH4)に変化しやすい

そのため、水素イオン(H+)濃度が高い水(PHが低い水)ほどアンモニア(NH3)はアンモニウムイオン(NH+)に変化しやすくなります。

逆に、水素イオン(H+)濃度が低い水(PHが高い水)ほどアンモニア(NH3)が多くなります。

このように、水槽内で発生するアンモニアは、遊離アンモニア(NH3)とアンモニウムイオン(NH+)の2種類の形で常に変化しながら存在していることになります。

イオン反応式で示すと次のようになります。

アンモニア(NH3)はアンモニウムイオン(NH4)に変化しやすい

このうちアンモニウムイオン(NH+)はそれほど毒性は高くありませんが、遊離アンモニア(NH3)は非常に毒性が高く、少量でも重大な影響を及ぼすことがあります。

そのため、アクアリウムにおいてはこの遊離アンモニア(NH3)を可能な限り0に近づける必要があります。

水槽内の水の浄化サイクル②:有機物を分解してアンモニアに

③ アンモニアを分解して亜硝酸に

発生したアンモニア(NH3)やアンモニウムイオン(NH+)は、アンモニア酸化バクテリアにより亜硝酸イオン(NO2)に変化します。

アンモニア酸化バクテリアにも様々な種類がありますが、 Nitrosomonas(ニトロソモナス)属やNitrosococcus(ニトロソコックス)属などが主であり、亜硝酸菌とも呼ばれています。

また、このアンモニア酸化バクテリアは好気性バクテリアであり、代謝を行う際に酸素を消費します。

反応式で示すと次のようになります。

水槽内の水の浄化サイクル③:アンモニアを分解して亜硝酸に

通常水中では亜硝酸(HNO2)は、亜硝酸イオン(NO2)や金属が結合した亜硝酸塩の状態で存在しています。

この亜硝酸イオン(NO2)も非常に毒性が高く、アンモニアと同様に水槽内の濃度を限りなく0に近づけるのが望ましいです。

水槽内の水の浄化サイクル③:アンモニアを分解して亜硝酸に

④ 亜硝酸を分解して硝酸に

亜硝酸イオン(NO2)はさらに亜硝酸酸化バクテリアにより硝酸イオン(NO3)や金属が結合した硝酸塩に変化します。

亜硝酸酸化バクテリアにも様々な種類がありますが、 Nitrobacter(ニトロバクター)属やNitrospira(ニトロスピラ)属などが主であり、硝酸菌とも呼ばれています。

また、この亜硝酸酸化バクテリアは好気性バクテリアであり、代謝を行う際に酸素を消費します。

反応式で示すと次のようになります。

水槽内の水の浄化サイクル④:亜硝酸を分解して硝酸に

硝酸イオン(NO3)は低毒性であり、多少水槽内に存在していても大きな問題にはなりませんが、高濃度になりすぎると生体へのストレスや免疫抵抗力の低下、病気の発生原因になることがあるので、低濃度で維持するのが理想です。

水槽内の水の浄化サイクル④:亜硝酸を分解して硝酸に

⑤ 脱窒や植物への吸収、水換えなどによる硝酸の除去

水槽内の硝酸イオン(NO3)や硝酸塩の一部は硝酸還元バクテリアにより還元され、窒素(N2)として大気中に放出されます。

硝酸還元バクテリアは通性嫌気性従属栄養細菌であり、溶存酸素量が少ない嫌気条件下では硝酸塩を最終電子受容体として使用して窒素(N2)などを放出する代謝を行います。

硝酸還元バクテリアには様々な種類があり、全ての種類が硝酸イオン(NO3)を窒素(N2)に還元するというわけではなく、亜硝酸イオン(NO2)やアンモニア(NH3)に還元してしまう種類もあります。

このうち窒素(N2)まで還元するものは脱窒菌とも呼ばれ、Pseudomonas denitrificansなどが知られています。

また、硝酸塩の一部は水草などの植物が栄養として吸収しますので、成長の早い水草を多く植えておくと水槽内の硝酸塩をよく吸収してくれます。

水量が多く、飼育生体の数が少ない場合は脱窒作用と水草の吸収作用により、足し水のみで長期に渡って硝酸塩濃度を低く維持することが可能な場合はありますが、通常の飼育環境や過密な飼育状況では定期的な水換えを行うことにより硝酸塩を除去することが望ましいです。

水槽内の水の浄化サイクル⑤:水槽内の硝酸の除去

水槽を安定して維持するためには

水槽を安定して維持するためには、アンモニア(NH3)や亜硝酸イオン(NO2)を可能な限り0に近づけて、硝酸イオン(NO3)も低濃度で維持するのが望ましいです。

特に水槽立ち上げ初期にはアンモニア酸化バクテリアや亜硝酸酸化バクテリアが十分に繁殖しておらず、アンモニア(NH3)や亜硝酸イオン(NO2)が急増し、水槽内の生体にとって危機的状況になる場合があります。

バクテリアが十分に繁殖して安定した後も、過密飼育や餌のあげすぎなどで、アンモニア(NH3)濃度が高くなる場合がありますので気を付ける必要があります。

通常、アンモニア(NH3)や亜硝酸イオン(NO2)については、水槽内にバクテリアがしっかりと定着しており、適切な生体飼育密度であれば速やかに硝酸イオン(NO3)へと分解されます。

ただし、硝酸塩については脱窒による大気放出や水草などの植物への吸収により一部は除去されますが、生体飼育密度が低い場合でなければ硝酸塩濃度は増加していき、生体にダメージを与える可能性があるので、定期的な水換えによる除去を行うことが望ましいです。

まとめ

安定した水槽では、水の浄化サイクル(生物濾過のサイクル)が出来上がっており、水質の維持がしやすい環境になります。

水槽内で発生する餌の残りやフン、飼育生体の老廃物などの有機物は、有機栄養細菌やアンモニア・亜硝酸酸化バクテリアによりアンモニア(NH3)、亜硝酸イオン(NO2)、硝酸イオン(NO3)に分解されます。

このうちアンモニア(NH3)と亜硝酸イオン(NO2)は非常に毒性が高く、水槽内の濃度を可能な限り0に近づける必要があります。

硝酸イオン(NO3)は低毒性ですが、高濃度になると生体へのストレスや免疫低下による病気発生が多くなったり、ダメージを与えます。

通常、アンモニア(NH3)や亜硝酸イオン(NO2)については、水槽内にバクテリアがしっかりと定着しており、適切な生体飼育密度であれば速やかに硝酸イオン(NO3–)へと分解されます。

ただし、硝酸イオン(NO3)については、一部が脱窒菌により窒素(N2)に還元されて大気中に放出されたり、植物に吸収されることはありますが、飼育生体の密度が高いと水槽内に蓄積されていくことが多いので、定期的な水替えで低い濃度を維持していく必要があります。

水槽を安定して維持するためには下図のような水質浄化サイクルをよく理解し、アンモニア(NH3)や亜硝酸イオン(NO2)、硝酸イオン(NO3)などの有害物質の濃度が許容限度を超えないように、飼育生体の密度や餌の量、水換えの頻度などを考え、サイクルが崩壊しないように注意する必要があります。

水槽内の水の浄化サイクル




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