アクアリウムで魚などの飼育する場合は夏場の高水温対策が必要になります。
熱帯魚の場合においても水温が30℃を超えるとダメージを受けて弱ってしまったり、高水温が続くと全滅の恐れもあります。
そのため、水温が30℃を超えるような日が続く場合はエアコンで部屋を冷やすか、水槽用クーラーや冷却ファンを使用して水温を下げる必要があります。
冷却方法によりそれぞれ特徴や注意点がありますので、飼育する生体や水槽、部屋の環境に合わせて適切な冷却方法を選択するようにしましょう。
ここでは、水槽用クーラーによる水槽の高水温対策のメリットやデメリットについて詳しく解説していきます。
水槽用クーラーとは
水槽用クーラーとは、水槽の水温を下げるために使用される冷却装置です。
ほとんどの水槽用クーラーは水槽の外部に設置し、水中ポンプやフィルターに接続して水槽の水をくみ上げて、クーラー本体内部を通して水を循環させることによって冷却します。
水槽内の温かい水をクーラー本体内で冷やして水槽に戻すイメージです。
水槽用クーラーのメリット
水槽用クーラーのメリットは以下の通りです。
メリット① 冷却能力が高い
水槽用クーラーは水槽の水を直接冷却するため、冷却ファンと比較しても冷却能力が高く、水槽に合った水槽用クーラーを使用すれば確実に水温を下げることができます。
また、エアコンによる室温管理とは違い、水温を室温以下にすることも可能です。
また、冷え過ぎを防止するためにサーモスタットが内蔵されており、目標水温を設定できるようになっている製品が多いです。
水槽の水量が多い場合や使用する機器の発熱が大きい場合には設定した温度まで下がらない場合もありますので、水槽の環境に合わせたスペックの水槽用クーラーを選ぶ必要があります。
メリット② 水槽の見た目に影響しにくい
水槽用クーラーは水槽の外に設置するので、下の画像の冷却ファンのように水槽上部で目立ってしまうこともなく、水槽の観賞性を考えても非常に良いです。
水槽用クーラーに水を循環させるために水中ポンプや配管を設置する必要がある場合もありますが、もともと外部式フィルターを使用している場合には外部式フィルターと水槽用クーラーを接続すればよいので、水槽から追加の配管が出ることなく設置できます。
メリット③ 水の蒸発が少ない
冷却ファンを使用する場合は水槽にフタをするのが難しくなる上、水の蒸発が促進されるために一日でも結構水位が下がってくる場合があり、定期的な足し水が必要です。
一方水槽用クーラーの場合は蒸発が少なく、配管に対応したフタであればつけることが可能です。
また、フタをつけることによって生体の飛び出し事故を防止する効果もあります。
メリット④ 水槽用ヒーターと併用で安定した温度管理が可能
水槽用クーラーには別売りのヒーター用コンセントがついている製品もあります。
このような製品では、設定温度より低い場合のみヒーターが通電して水を温め、設定温度より高い場合にはクーラーが作動します。
室温の変化が激しい時期には水温が上がったり下がったりしますので、水槽用クーラーと水槽用ヒーターを併用することにより、安定した水温を保つことが可能になります。
例えば水槽用クーラーで有名なゼンスイ社のZCシリーズなどではヒーター用コンセントが搭載されています。
水温をしっかりと管理したい方には非常におすすめです。
ヒーター用コンセントがついている製品は水温をより安定して管理することができます。
水槽用クーラーのデメリット
水槽用クーラーのデメリットは以下の通りです。
デメリット① 導入費用が高い
水槽用クーラーは小型水槽用の最も安いものでも1万円程度します。
100Lを超えるような水槽では3万円程度から、超大型水槽用では10万円を超えてきます。
以下に市販されている水槽用クーラーを示しますが、やはり水槽用クーラーは導入費用が非常に高いのが大きな欠点です。
様々なメーカーより水槽用クーラーが販売されています。
デメリット② 循環動力源が必要
水槽用クーラーは本体内部に水を循環させる必要があるため、フィルターや水中ポンプなどの別の動力源が必要になります。
そのため、水槽用クーラーの推奨循環能力を持ったフィルターや水中ポンプを持っていない場合には別途購入する必要があり、ホースや配管も必要になります。
以下の製品のように、水槽用クーラーで使用する水中ポンプと配管がセットになった製品もあります。
水中ポンプやフィルターを選ぶ際には、水槽用クーラーに対応する流量かどうかや、東日本と西日本の違いによる周波数の違いなどを良く確かめた上で購入するようにしましょう。
水中ポンプと配管のセットです。
流量や周波数などを良くお確かめの上クーラーなどへの接続にお使いください。
デメリット③ 設置に手間がかかる
水槽用クーラーはフィルターや水中ポンプと接続して使用する必要があり、導入時に配管やホースをつなぐ作業が発生します。
難しい作業ではありませんが、簡単に取り付けができる冷却ファンと比較すると少し手間がかかります。
また、正しく接続しないと水漏れのリスクもありますので注意が必要です。
デメリット④ 本体から排熱があるため室温が上がる
水槽用クーラーは水槽を冷やす代わりに本体から排熱があります。
水槽用クーラー本体はフィルターを通して吸気を行う部分と、排熱のための排気を行う部分があることが多いです。
排熱部分は閉鎖空間だと熱がこもって冷却効率が落ちたり、水槽用クーラー自体にもダメージを与える可能性がありますので、通気性の良い場所に設置する必要があります。
また、排熱により部屋の温度が上昇する場合があり、他に水槽用クーラーを使用していない水槽がある場合や、人が生活するには暑くなりすぎる場合にはエアコンも使用して室温を下げる必要があります。
デメリット⑤ 電気代がかかる
水槽用クーラーは結構電力を使用します。
水温が設定温度より高い場合のみ冷却するので常時電力を使用しているわけではありませんが、冷却時には小型水槽用のものでも70W程度は使用します。
100L用では100W程度から、大型水槽用では数百W以上使用します。
小型~中型水槽では月数百円から、大型水槽では月数千円ほど電気代がかかってしまいますので注意が必要です。
デメリット⑥ 水槽に結露が発生する場合がある
水温が室温より極端に低い場合は水槽に結露が発生することがあります。
通常の使用であれば基本的に結露が発生することはありませんが、特に真夏に低水温を好む魚を飼育する場合で、室温と水温の差が15℃以上になるような場合は結露が発生しやすくなります。
結露が発生すると水槽内が見えにくくなりますし、酷い場合は水がたれて周辺機器に影響が出たり水槽台や床にも悪影響があります。
このような場合はエアコンを使用して室温を下げつつ、除湿も行って結露の発生を防ぐ必要があります。
デメリット⑦ 音がうるさく感じる場合がある
水槽用クーラーはある程度の稼働音があります。
特に冷却時は水槽用クーラー本体の熱を冷やすためにファンが回り、うるさく感じることが多いです。
音の感じ方は人それぞれですが、寝室で使用する場合は眠れなくなったりする人もいるようです。
就寝中はエアコンも使用して水槽用クーラーの稼働を減らすなどすればある程度問題なく使用することができると思いますが、音に敏感な方はエアコンによる24時間管理の方が良いと思います。
水槽用クーラーはどのような水槽に向いている?
水槽の高水温対策として、エアコンを使用するか、水槽用クーラーを使うか、冷却ファンを使用するか迷うこともあると思います。
ここでは水槽用クーラーを使用したほうが良いケースについて説明していきます。
しっかりと水温を下げたい場合
水槽用クーラーは水槽の水をクーラー本体内に循環させて直接冷やすので、水槽サイズや目標温度設定などに対応したスペックの水槽用クーラーを使用すれば確実に水槽を冷やすことができます。
渓流魚などの低水温飼育が望ましい種類の魚を飼育する場合などでは、エアコンや冷却ファンでは難しいことが多いため、水槽用クーラーで低水温に温度設定を行ってしっかりとした水温管理をしたほうが良いと思われます。
ただし、目標温度と室温の差が大きい場合は、水槽水量に対して通常推奨されるものよりスペックの高い水槽用クーラーを使用する必要があります。
エアコンの設定温度よりも水温を下げたい場合
通常、水槽内の水温は熱源がない場合は室温と同じか、水の蒸発による冷却効果で室温より少し低めになることが多いです。
ただし、水槽にフィルターや水流発生用の水中ポンプ、照明を設置している場合は熱が発生するため、水温は室温よりも高くなる場合があります。
エアコンによる温度管理で低水温を好む魚を飼育する場合は、目標温度よりも設定温度を低くする必要があり、人が生活するには室温が低すぎて寒く感じることがあります。
このように、エアコンによる温度管理では難しい場合には水槽用クーラーを使用したほうが良いです。
エアコンとの併用も非常に効果的なのでお勧めです。
人がいるときだけエアコンを使用している部屋で
エアコンによる24時間の温度管理では、水温がある程度一定に保たれるので、その水温で飼育に問題がなければ水槽用クーラーは必要ありません。
ただし、人がいるときだけ一時的にエアコンを使用する部屋の場合は、冷房のオンオフで水温が急変し、飼育する魚が急な環境変化についていけずにダメージを受けてしまうことがあります。
特に小さい水槽の場合は水温の変化が速いので注意が必要です。
このような場合は水槽用クーラーで水温を常に下げておけば、エアコンをかけて室温が急激に下がっても水槽内の温度が急変することはないので安心です。
また、万が一エアコンをかけていない時間帯に室温が35℃など、生体にとって致命的な暑さになった場合でも安心です。
小型水槽一つだけの場合
小型水槽の場合は小型水槽用のクーラーのみでしっかりと温度管理をすることができます。
小型水槽一つだけの場合は、部屋の大きさや室温にもよりますが、24時間エアコンをつけておくより水槽用クーラーで水槽のみを冷却したほうが電気代が安い場合もあります。
小型水槽用のクーラーは、ゼンスイ社のTEGARU2(TEGARUⅡ)がおすすめです。
TEGARU2は手のひらサイズの非常にコンパクトなペルチェ式クーラーです。
ペルチェ式なので強力な冷却能力はありませんが、30cm以下の水槽などの小さい水槽で、熱源があまりない水槽であれば十分な冷却能力があります。
前身のTEGARUがリニューアルし、冷却・加温効率がアップした製品です。
また、冷却だけでなく加熱・保温もできるので冬はヒーターとして使えるのも非常に大きな長所です。
小型水槽に最適なペルチェ式クーラーです。
冷却効果だけでなく、冬には保温する効果も持ち合わせます。
手のひらサイズでコンパクトなので、設置スペースにも困りません。
水槽用クーラーの使用がおすすめできない環境は?
冷却能力が高く、確実に水槽を冷やすことができる水槽用クーラーですが、場合によっては使用をおすすめできない場合があります。
ここではそのようなシチュエーションを紹介します。
水槽が大量にある場合
水槽が大量にある場合は、全ての水槽に水槽用クーラーをつけるのは現実的ではありません。
水槽用クーラーは導入費用も高いですし、それなりに電気代もかかります。
部屋にたくさんの水槽がある場合は24時間エアコンを使用して部屋ごと冷やしてしまうのが楽ですし、水槽を増やしても電気代がほとんど変わらないのでおすすめです。
ただし、水槽内に水中ポンプがあったり強い照明を使用している場合は、水温が室温より高くなる場合がありますので、飼育する魚に合わせて、水温を確認しながらエアコンの設定温度を調整する必要があります。
一般的な金魚や熱帯魚などであれば、水温が28℃程度までとなるようにしておくと良いでしょう。
水槽の環境にもよりますが、室温は23~25℃程度となるようにしておけば安心です。
低水温を好む魚を飼育する場合には、エアコンの設定温度をかなり下げないといけないため、その部屋で人も生活することを考えると現実的ではなくなります。
そのような場合はエアコンと併用して、低水温を好む魚の水槽のみに水槽用クーラーを使用するのがおすすめです。
コストを抑えたい場合
導入費用や電気代などのコストを抑えたい場合は水槽用クーラーの導入はおすすめできません。
水槽用クーラーは導入費用が非常に高いですし、電気代もそれなりにかかります。
導入費用を抑えたい場合はエアコンを使用するか、冷却ファンを用いるのが良いと思います。
エアコンが設置されている部屋であればそのまま使えますし、冷却ファンであれば2000円~3000円台程度で購入することが可能です。
また、水槽の大きさや設定温度などの環境にもよりますが、水槽用クーラーを使用するよりもエアコンの24時間管理の方が電気代が安くなる場合も多々あります。
冷却ファンも消費電力が非常に低いので、電気代についても水槽用クーラーと比較してかなり安くなります。
ただし、水温を18℃にしたいなど、低水温を維持させたい生体を飼育する水槽などでは、エアコンや冷却ファンでは難しいことが多いです。
このような場合は水槽用クーラーを使用するしかないですし、室温に対して水温を大きく下げたい場合はハイスペックな水槽用クーラーが必要になります。
電気代や導入費用に関して問題があるのであれば、飼育する生体の見直しなどをする必要があると思われます。
まとめ
水槽用クーラーとは
水槽用クーラーとは、水槽の水温を下げるために使用される冷却装置です。
ほとんどの水槽用クーラーは水槽の外部に設置し、水中ポンプやフィルターに接続して水槽の水をくみ上げて、クーラー本体内部を通して水を循環させることによって冷却します。
水槽用クーラーのメリットとデメリット
メリット
- 冷却能力が高い
- 水槽の見た目に影響しにくい
- 水の蒸発が少ない
- 水槽用ヒーターと併用で安定した温度管理が可能
デメリット
- 導入費用や電気代が高い
- 循環動力源が必要
- 設置に手間がかかる
- 本体からの発熱がある
- 音がうるさく感じる場合がある
水槽用クーラーはどのような水槽に向いている?
水槽用クーラーは冷却能力が高いので、しっかりと水温を下げたい場合や、エアコンの設定温度よりも水温を下げたい場合などには非常に有用です。
特に小さな水槽が一つだけの場合は小型水槽用のクーラーで電気代もそれほど高くなく十分に冷やすことができるのでおすすめです。
逆に、水槽がたくさんある場合や大型水槽の場合は水槽用クーラーの導入費用や電気代も高くなりますので、エアコンでの24時間管理の方が良い場合もあります。
低水温でしっかりと管理したい場合はエアコンと水槽用クーラーを併用するのがおすすめです。
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