アクアリウムで魚などを飼育する際に水槽に添加するものとしては、塩素中和剤(カルキ抜き)や粘膜保護剤、水質調整剤など様々なものがあります。
そのうちの粘膜保護剤については何となく添加している方や、添加していないという方も多いのではないでしょうか。
このページでは粘膜保護剤のメリットとデメリットについて詳しく解説し、おすすめの製品も紹介します。
魚の粘膜の役割
魚は粘膜で覆われており、常に粘液を分泌しています。
釣りなどで魚を触った際にヌルヌルしていると感じたことがある方は多いと思いますが、それが魚の粘膜です。
魚は人間などの動物のように皮膚が角質で覆われているわけではなく脆弱なつくりになっており、常に水中にいることから様々な病原体やウイルスなどにさらされているため、魚は粘膜から粘液を出すことによって身を守っています。
魚の粘液には体表のスレや病原体の侵入を防いだり、pH(ペーハー)などの水質変化による影響を和らげる効果があり、生命を維持するために重要な役割を担っています。
健康な魚は粘膜からしっかりと粘液が分泌されていますが、ストレスを感じていたり状態が優れない魚の場合は粘膜による防御効果が弱くなり、病気にかかりやすくなることがあります。
粘膜保護剤とは
アクアリウムで魚の飼育用に作られている粘膜保護剤は、有機ポリマーなどの高分子化合物が配合された製品が多いです。
この有機ポリマーによって、魚の粘膜を増強したり、粘膜が欠損している場所に対して人工粘膜として作用することによって魚の体表やエラを保護します。
粘膜保護剤や、粘膜保護成分を含む水質調整剤は多くの製品が販売されており、次項で説明するように様々な効果があります。
各メーカーより様々な粘膜保護剤が販売されています。
観賞魚飼育における粘膜保護剤の効果
観賞魚飼育における粘膜保護剤の効果やメリットは以下の通りです。
粘膜を増強させる
粘膜は魚にとって体を守るバリアーのようなものですが、魚の調子によっても粘液の量は変化します。
粘膜保護剤を使用することにより、粘液の量が少ない際に補強したり、より粘膜を増強する効果があります。
これによって、魚を外傷や病原体から強力に保護することが可能になります。
新しい生体の導入時など、ストレスや水質変化によって粘膜の粘液が減少している場合などにも大きな効果を発揮します。
傷や粘膜の欠損を保護する
魚は大きな傷を負ったり粘膜に欠損ができたりすると、そこからダメージを受けやすくなったり病原体の侵入により病気になって死んでしまうこともあります。
魚にも自然治癒力があるので多少の傷や粘膜の欠損は自然に治っていくこともありますが、調子が良くない場合やストレスを感じている場合には状況が悪化することが多いです。
特に大きな傷がある場合や粘膜が大きく欠損してしまった場合はその後の生存率が著しく低下します。
粘膜保護剤を使用すると、傷や粘膜の欠損部分を保護してくれるので、外傷を受けた際の生存率が大きく上がることが知られています。
過密飼育や入り組んだレイアウトなどにより体のスレや傷が起こりやすい場合にも粘膜保護剤は非常に有効です。
病気になりにくくなる
粘膜保護剤を使用すると、バリアー機能が増強されることによりウイルスや細菌などの病原体の侵入を防ぐことができ、病気になりにくくなります。
また、急な水質変化の影響を低減し、肌荒れの発生やそれによる感染なども防いでくれる効果もあるので、生体導入時や多めの水換えを行う場合などには使用していると安心です。
このように、魚の場合は病気になってからでは回復が難しいことも多いので、粘膜保護剤を使用した病気予防は非常に有効です。
観賞魚飼育における粘膜保護剤のデメリット
粘膜保護成分により病魚薬が効きにくくなる
粘膜保護剤を使用している場合、魚の体表やエラが強力にコーティングされるため、病魚薬を使用していても薬が浸透しにくくなり、効果が最大限に発揮できない場合があります。
薬の種類によっては多少効果が落ちる程度であったり、ほとんど無効化されてしまったりと様々ですが、薬浴の際にはできるだけ粘膜保護剤を使わないようにしましょう。
粘膜保護剤を入れすぎると酸欠の危険性がある
粘膜保護剤は水の粘度を上げるため、酸素が水中に溶け込みにくくなります。
濾過装置やフィルターの使用によって水がしっかりと循環していたり、エアレーションを行っている水槽であれば、規定量の粘膜保護剤を使用していても基本的には問題ありません。
粘膜保護剤を大量に入れたり、酸欠対策ができていない水槽では溶存酸素量が減少して魚やエビなどの生体に影響が出ることもあるので注意が必要です。
プロテインスキマーをつけている海水水槽では使用できない
淡水海水両用の粘膜保護剤であれば海水水槽でも使用することが可能ですが、プロテインスキマーを使用している場合には泡が大量発生してしまい、オーバースキミングしてカップがあふれてしまうことがあります。
これは、粘膜保護剤の成分によって海水の粘度が上がることによるものです。
粘膜保護剤の使用量が少なければオーバースキミングしないこともありますが、スキマーの調整が難しくなることもありますので、基本的にはプロテインスキマーを付けている水槽での使用はおすすめできません。
また、プロテインスキマーを使用していない水槽で粘膜保護剤を使用する場合には、入れる順番を間違えると塩の塊が発生する場合がありますので、人工海水の素を完全に水に溶かしてから入れるようにしましょう。
おすすめの粘膜保護剤
ここでは市販されている粘膜保護剤のうち、おすすめの製品のみを紹介します。
メダカや金魚、熱帯魚や海水魚まで幅広く使える粘膜保護剤
メダカや金魚、熱帯魚やプロテインスキマーを使用していない海水魚水槽まで幅広く使えて効果も高く、最もおすすめな粘膜保護剤はキョーリンのプロテクトX 業務用です。
この製品はメーカーのホームページで実験結果を公表しており、粘膜に物理的なダメージを受けた後にプロテクトXを使用すると生残率が向上することを示しています。
↑↑プロテクトXのパッケージより。株式会社キョーリンのホームページにも載っています。
淡水・海水両用の粘膜保護剤です。
魚の粘膜に限りなく近い成分の高分子ポリマーが、傷ついた魚の体表を保護します。
水換え時の水質変化から魚の粘膜を守ります。
カルキ抜き成分は含まれていません。
プロテクトXの業務用タイプは、粘膜保護剤単体の製品でたっぷり3.78リットル入っており、非常にコストパフォーマンスが良い製品です。
カルキ抜きの成分が入っていないため別途カルキを抜く必要がありますが、浄水器を使用している場合は不要な塩素中和成分を入れずに済みますし、お気に入りのカルキ抜きがある場合などには非常におすすめです。
また、同シリーズの業務用ではないバージョンの製品の方には塩素中和成分が入っているのでカルキ抜きは必要ありません。
浄水器を使用していない方にはこちらもおすすめです。
淡水・海水両用の粘膜保護剤です。
魚の粘膜に限りなく近い成分の高分子ポリマーが、傷ついた魚の体表を保護します。
水換え時の水質変化から魚の粘膜を守ります。
この商品にはカルキ抜き成分が含まれています。
粘膜保護剤のみでなくカルキ抜きやビタミン・ミネラルも含む総合水質調整剤
粘膜保護剤のみではなく様々な水質調整作用があるテトラのアクアセイフもおすすめです。
この製品は粘膜保護成分の他にカルキ抜き成分やビタミン・ミネラルを配合し、クロラミンや重金属(亜鉛・鉛・カドミウム・銅)を無害化する作用があります。
うるおい成分(強力コロイド)が体表を包み、魚の健康な粘膜・エラを守る水に調整します。
水道水に含まれる有害なカルキ・クロラミン・重金属(銅・亜鉛・鉛・カドミウムなど)を無害化します。
ビタミンB1が魚のストレスを緩和する水に調整します。
この製品は、規定量を守った使用であれば大きな問題はありませんが、大量に投入したりするとペーハーをやや酸性に傾けたり、飼育水が少し青色に着色することがあるので注意が必要です。
また、アクアセイフは使用すべき規定量が水10Lに対して5mLと多めであるため、カルキ抜きや粘膜保護剤の中ではコストパフォーマンスが少し悪い製品ではあります。
様々な効果がある総合水質調整剤ですので多少割高になるのは仕方ないですが、気になる場合にはアクアセイフの下位製品である同社のパーフェクトウォーターもおすすめです。
パーフェクトウォーターは粘膜保護成分の他にカルキ抜き成分が入っており、クロラミンや重金属の無害化の効果を備えています。
アクアセイフのようなビタミンやミネラルは含まれていませんが、使用すべき規定量も水10Lに対して2mLと少ないのでコストパフォーマンスは良いです。
魚の健康な粘膜・エラを守る水に調整します。
水道水に含まれる有害なカルキ・クロラミン・重金属(銅・亜鉛・鉛・カドミウムなど)を無害化します。
まとめ
魚の粘膜の役割
魚の粘膜はぬめりのある粘液を分泌し、体表のスレや病原体の侵入を防いだりpH(ペーハー)などの水質変化による影響を和らげる効果があり、生命を維持するために重要な役割を担っている。
粘膜保護剤とは
アクアリウム用の粘膜保護剤は有機ポリマーなどの高分子化合物が配合された製品が多く、魚の粘膜を増強したり粘膜が欠損している場所に対して人工粘膜として作用することによって魚の体表やエラを保護する。
観賞魚飼育における粘膜保護剤の効果
- 粘膜を増強させる
- 傷や粘膜の剥がれに強くなる
- 病気になりにくくなる
→ストレスや水質変化によって粘液の分泌が減少している場合にも有効。
→過密飼育やレイアウトなどにより体のスレや傷が起こりやすい場合にも有効。
→ウイルスや細菌などの病原体の侵入を防ぎ、急な水質変化による肌荒れやそれによる感染なども防止する。
観賞魚飼育における粘膜保護剤のデメリット
- 粘膜保護成分により病魚薬が効きにくくなる
- 粘膜保護剤を入れすぎると酸欠の危険性がある
- プロテインスキマーをつけている海水水槽では使用できない
→魚の体表やエラが強力にコーティングされるため病魚薬を使用していても薬が浸透しにくくなる。
→粘膜保護剤の規定量を守ってフィルターによる水の循環やエアレーションがなされていれば大きな問題はない。
→海水の粘度が上がることによって泡が大量発生してしまう。
おすすめの粘膜保護剤
- キョーリン プロテクトX 3.78リットル 業務用
- キョーリン プロテクトX 500ml
- テトラ アクアセイフ 500ml
- テトラ パーフェクトウォーター 500ml
→粘膜保護剤単体の商品でありカルキ抜き成分が含まれないので浄水器や別途塩素中和剤を使用している場合にはおすすめ。
→効果やコストパフォーマンスが高く、メダカや金魚、熱帯魚やプロテインスキマーを使用していない海水魚水槽まで幅広く使える。
→上記製品と同様だがこちらはカルキ抜き成分が配合されているので別途塩素中和剤を用意する必要がない。
→粘膜保護成分の他にカルキ抜きや重金属無害化の効果があり、ビタミンやミネラルなどを配合した総合水質調整剤。
→水10Lに対して5mL添加する必要があり、添加量が多いので少し割高感がある。
→上記アクアセイフの下位製品であり、粘膜保護成分の他にカルキ抜きや重金属無害化の効果がある。
→ビタミンやミネラルが配合されていない分安くなりコスパが良い製品。
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